【第3話】スイングの基礎は?「PWで30・50・70ヤード」を積み上げるのが最短ルート

30ヤードショット 100切り物語
100切りを目指すシニアゴルファーとコーチのレッスンを描いた連載です。
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「田中さん、今日からスイングの基礎を作ります」

その言葉を聞いた瞬間、田中さんは小さく頷いた。そしてバッグに手を伸ばし、ドライバーを握った。

「田中さん、ドライバーはいったん置きましょう」

「え?」

私はピッチングウェッジを差し出した。

「今日はこれです」

「え……基礎って、まずドライバーからじゃないんですか」

「田中さん、今までドライバーばかり練習して、スイングは固まりましたか」

短い沈黙。

「……固まってないですね」

「それが答えです」

「PWで打つ30ヤードに、スイングの基礎が全部入っています。グリップ、体の回転、重心移動、リズム。アイアンも、ドライバーも、この基礎をそのまま大きくしただけなんです」

田中さんはゆっくり頷いた。

「……確かに。ドライバーを振っているとき、ミスしても何が悪かったのか分からないまま次の球を打ってました。曖昧なまま、ずっと続けていた気がします」

「そうです。大きい動きの中では原因が見えない。だからまず30ヤードで正解を作る。その正解を50ヤードに持ち込んで、さらに70ヤードへ積み上げる。順番が大事なんです」

田中さんはピッチングウェッジを見つめた。

さっきまでただのウェッジだったものが、急に意味を持ったように見えました。

田中さんは腰から腰の振り幅で、30ヤードを淡々と打ち始めた。

最初はバラついていた打音が、球を重ねるうちに「シュパッ」と締まった音に変わっていく。

「当たりが厚くなってきましたね」

「ええ、フェースに乗る感じがあります」

「それがインパクトの正解です。まずこのリズムを体に入れてください」

田中さんの表情から、余計な力みが消えていきました。

次に振り幅を肩から肩へ広げて、50ヤードへ移った。

「50ヤードになっても、30ヤードのリズムを変えないでください。大きく振ろうとすると、必ず打ち急ぎが出ます」

シュパッ。

ボールはロフト通りに上がって、50ヤード地点へ吸い込まれていった。

「……勝手に飛んでいきますね」

「そうです。飛ばそうとすると飛ばない。基礎のリズムを守ると、勝手に飛ぶ。ゴルフはそういうスポーツです」

田中さんは苦笑しながら、もう一球構えた。

「……なんだか、今までの自分がよく分かります。ドライバーを振り回して、ミスの原因も分からないまま、ただ球数だけ増やしてましたね」

最後に70ヤードへ移った。

「田中さん、これを今日からあなたの実戦フルショットにしましょう」

「7割くらいのスイングが、フルショットですか?」

「そうです。100を切りたいなら、全力で振るスイングは必要ありません。全力で振るほど、球はバラつく。7割くらいの、無理なく振れるスイング。それがコースで一番武器になります」

田中さんは深く頷いて、構えた。

シュパッ。

「……不思議ですね。100ヤードを狙って力んでいた頃より、球が強くなった気がします」

「30ヤードで覚えたリズムを、50で運んで、70へ持ち込んだ。余計な力みが抜けた分、エネルギーがそのままボールに伝わっているんです」

打ち終えた田中さんは、手の中のピッチングウェッジを見つめながら言った。

「今まで、ずっと振り回してばかりでした。今日ようやく、自分のスイングがどこにあるのか、見えた気がします」

「田中さん、しばらくの間はPWの30・50・70だけを繰り返してください」

「え……地味ですね」

「地味です。でも1カ月続けたら、スイングが別物になります」

田中さんは目を見開いた。

「1カ月で、そんなに変わるんですか」

「変わります。地味なことを続けられる人だけが、変わるんです」

田中さんはゆっくり頷いた。

その顔に、迷いはありませんでした。

あなたは、この練習をどう思いましたか?
こんな練習で本当に変わるのか、と思いましたか。
PWの30ヤードは「ビジネスゾーン」と呼ばれる、スイングを作るための核心です。
1カ月でいい。まずPWを持って、30ヤードから始めてください。
あなたのスイングの正解が、そこにあります。

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